日本語訳 
Lyric of Le Grille
G. Brassens

1.
他人の目を気にもせずに
女どもがしげしげと見つめていたのは
たくましい一匹のゴリラ
ゴリラは大きな鉄格子の向こう側
おしゃべりな女どもは、破廉恥にも
母が、それを口にするのを厳しくしかった
ゴリラの立派なあそこを
もの欲しそうに横目で見つめて
ゴリラに、注意!

2.
ある日そのたくましい動物が暮らしていた檻の
しっかり閉まっていた筈の扉が開いた
鍵がきっちりとかかっていなかったのだ
たくましいゴリラは、檻から出て
「今日こそ捨てるぞ」とつぶやいた
ないをって、童貞を、捨てるんだと
お分かりでしょう
ゴリラに、注意!

3.
巡回動物園のボスは
取り乱して叫んだ
「畜生、やっかいなことだ。
このゴリラは、まだ女を知らない」
眺めていた女どもは
ゴリラが童貞と知るや否や
このチャンスを活かそうとせず
蹄鉄から火花が散るほど疾走する馬のように
大慌てで逃げ出した
ゴリラに、注意!

4.
ついさっきまで、卑猥な目つきで
あらぬことを妄想して欲情していた女どもは
わけもわからずに逃げ出した
怯えて逃げるなんて、
損だとわかるはず
ゴリラは好色で愛の行為も
巷の男より上手だと
ゴリラに注意!

5.
ヨレヨレの老婆と若い無感情な判事以外
さかりのついたゴリラからいちもくさんに逃げだした
女ども全員の姿が消えたのを見て
ゴリラはたくましい図体を左右に揺すって
四足でノッシノッシと老婆と判事の
ロングスカートめがけてまっしぐら
ゴリラに、注意!

6.
「あらら」と百歳の老婆はうっとりと
私に欲情するなんて、あろうことなら
凄いことだわ、とつぶやいた
でも、でも、それは望外のこと!
判事は、冷静に考えて
僕を雌ゴリラと間違えるなんて
絶対有り得ない、と
でも、実際起こったのは、その有りえないことだったと
彼は、身を以て知らされた!
ゴリラに、注意!

7.
あなただって
このゴリラのように
万一、行きがかりで
判事か老婆のどちらかを
強姦しなければ、ならなくなったら
どちらを選びます?
私なら、こんな場面に嵌りこんで
こんな選択に出くわしたら
間違いなく私が選ぶのは
老婆でしょう
ゴリラに、注意!

8.
しかし、ゴリラは情事に長けるけれど
趣味が悪くて、エスプリに欠けるって
ことぐらい周知でしょ
その時ゴリラは
老婆を選ばずに
判事の耳をつかんで
茂みの中に引きずりこんだ
ゴリラに、注意!

9.
この続きは
味わい深かいものですが
私の口からは言えません
でも言えないのは残念だ
言いましょう。お笑いでしょうが
その若い判事は
事の絶頂で、普段の鉄仮面はどこへやら
「ママァ!」と叫んでひどく泣いたのです
そのさまは、同じ日にこの判事が死刑にして
首を落せしめた男の最後の雄叫びと
同じ有り様でしたよ
ゴリラに、注意!