「銃弾が貫くものは」 ☆利用規約 ・Twitterなどのネット上にこのシナリオのURLのみを貼ることを禁止します。  このような行動を発見した場合、然るべき処置を取らせていただくのでご了承ください ・シナリオのネタバレを公開するのはお控えください。  黒幕の存在等を出す場合、他者が見られないようにするか、ネタバレ注意と一言添えるなりの配慮をお願いします。 ・これらの処置があまりにも取られていないと判断した場合、予告なしに非公開にする可能性があります。 ・シナリオ改変、動画使用などはオーケーです。  なお、このシナリオを使用した際のトラブルの責任は一切負いません。 ・使用報告や質問等何かあればTwitterへ  ネタバレ部分の質問でしたら、DM等のご使用をお願いします  雪空鈴音のTwitter→@1104rika08021 あらすじ  探索者達は、町の中で一人の黒いワンピースの少女に声を掛けられる。  瞬間。探索者達の意識は暗い底に落ちた。  再び探索者達が目を覚ますと、そこにいたのは真っ白なワンピースを纏った少女だった。 推奨技能 拳銃 目星 ※戦闘はないです 推奨人数 1〜4人 プレイ時間 ボイセで2〜5時間 テキセで3〜6時間 茨の道を行くのならロスト率高め 舞台  少女、海野葵の記憶を元に作られた空間である。  探索者は、葵の記憶によって作り出された、葵の家のリビング、両親の寝室、葵の部屋の三つを探索出来る。  まず、探索者が目覚める場所。ここがリビングである。リビングを出ると廊下が続いており、左右に葵の部屋と両親の寝室がある。  そして奥は、途中から行けるようになる鉄の扉がある。鉄の扉の奥は、真っ白な空間がある。  これらの部屋の外は暗闇が広がっており、暗闇の底には葵の「記憶」が落ちている。その中でも重要な「思い出」は扉となり、固く閉ざされている。 KP向け情報  この物語の黒幕はシャッガイことシャンである。  アザトーストに捧げる生贄を探す日々だったシャン。雨の日も風の日も、ニャル様が嵐で飛ばされる日も、彼は探し続けた…………。  そんなある日、シャンは見つけた。旅行の最中に足を滑らせ、海へ落ちてしまった今にも死にそうな少女、海野葵を。  生贄を捕まえることに苦労していたシャンは、葵を使い、生贄を浚うことを思い付いた。  シャンは、本来ならば死ぬはずだった葵を助け、彼女の体を乗っ取った。  葵の体を使い、生贄を捕まえ、捕まえた生贄を拷問した上で、生贄として捧げ出したのだ。  その状況に絶望したのが、葵だった。  意識だけはあった葵は、自分がひたすら人を拷問して、殺していく姿を見ることになる。やがて、葵はその状況を変えようと奮闘する。  自分が死ねば、シャンが生贄を捧げることが出来なくなる。そう考えた葵は、自分を殺してもらえるように設定した。  葵は、シャンに妨害されながら、自分の記憶を元に、自分を殺すのが最善だと思ってもらえるように仕向けた。  そして、その準備が整った時。  葵の体を使って、シャンが探索者に話しかけた時。葵は、探索者に自分を殺してもらう計画を発動した。  しかし、記憶を元に作ったせいで、葵は旅行行くまでの記憶しかない状態です。  なお、この空間はシャンの妨害を受けている影響で、至る所にシャンが今まで殺した犠牲者の姿がある。 海野 葵 22歳 大学生 女  このシナリオの核となる人物である。   旅行で訪れた地域で、崖から転落し、そのまま海へと落ちてしまった。本来ならそこで死ぬはずだったのだが、シャンによって命を助けられた。  しかし、そこからが地獄の始まりだった。少女をそのまま乗っ取ったシャンは、少女を通して生贄を捕まえ、拷問し殺し始めたのだ。  それをなんとかしたい葵は、自分を殺してそれを止めさせようとする計画を立てた。  そのため、葵はなんとかして探索者に自分を殺してほしいと思っている。  それと同時に、本来ならば自分は死んでいる人間だと認識しているので、死ぬのはおかしくないと頭のどこかで思っている。  自分の記憶を元に、探索者を救う世界を作る。その代償か、シャンに乗っ取られる前までの記憶しかない。  この記憶は、探索者が奥の部屋に行くと思い出す。  なお、葵の性別、性格や喋り方はKPが任意で変更しても構いません。ただ、なるべくPL、PCが感情移入しやすいようにすると良いと思います。 導入  夏の、ある休日のことです。あなたたちは、買い物や遊びになど、各々の理由で繁華街を歩いています。  歩いている最中のことです。  あのー、すみません。という風に声を掛けられます。  あなたたちが、その声の主を見れば、そこにいたのは黒いワンピースを纏った少女でした。  彼女は、あなたたちに向かってにっこり微笑み。  瞬間、あなたたちの目の前は真っ暗になりました。 ☆目覚め  あなたたちが目を覚ますと、そこはどこかの家のリビングでした。  あなたたちは、そのリビングの床で寝かされていたようです。  目を開くのでしたら、あなたたちは、すぐ近くで自分を心配そうに見つめる、真っ白なワンピースを纏った少女の存在に気付くでしょう。  目を覚ましたことに気付くと、少女は嬉しそうに笑いかけます。 「ああ良かった。目が覚めたんですね」  そう言った少女は、海野葵と名乗ります。 KP向け情報  この時点で、葵から得られる情報は以上です。 ・自分は気が付いたらここにいた。どうしてここにいるのかは分からない ・ここは、自分の家の自宅によく似ている ・探索者達に声を掛けた記憶はない ・ワンピースは自分の私服ではない ・最後の記憶は、家族と一緒に旅行に行こうと家を出た瞬間だ。丁度GWなので、あまり目立った観光地ではなく、海が見える所らしい。  これら全ては真実であるため、心理学を振っても、本当だということしか分かりません。  ただ、心理学や精神分析を彼女に振ると、どこか彼女が憔悴しきっていることが分かります。これは、シャンに乗っ取られた影響で、本人無自覚です。  彼女の最後の記憶が三か月前だと知るのなら、医学や精神分析で彼女が記憶喪失だと確信できるかもしれません。  葵は、自分の家とよく似ているこの場所に興味を持ち、探索をする探索者達についてきます。  葵は、基本的に探索者に協力的なので、何か技能を振るのをお願いしたら、振ってくれます。  ちなみに探索者の持ち物はあります。  が、青の色だけは抜き取られています。代わりに不透明な色が置かれています。 ☆最初に目覚めた部屋  至って普通のリビングです。  ファミリー用テーブル。ソファ、テレビ。ごく一般的な家具が並んでいるのが見えます。  が。  何故か、中央に宝箱が置かれてます。  真っ赤なそれは、まるでRPGに出てくるようなものでした。  そして、廊下に出ると思われる扉も、探索者の目に映ることでしょう。 ●ファミリー用テーブル よくある四人用テーブルです。  テーブルの上には、一枚の紙が貼りつけられています。 「私の願いを叶えてください。  残酷かもしれないけど、それでも、馬鹿なことはもうしたくないの」  と、手書きで書かれています。 →心理学・精神分析  女性の文字のように見えます。  また、文字の乱れから、切羽詰まった状況下でこれを書いたのではないか、と思います。 →葵の様子  文章に見覚えはないと言います。が、文字は自分の字だということが分かり、首をかしげています。 KP向け情報  これは、葵が書いた文です。  私の願い=私を殺して、ということになっています。  ただし、この時の葵に自覚はないので、葵はただ首を傾げることしか出来ません。 ●ソファー  ふかふかのソファーです。 →目星  ソファーの隙間を見ると、ふと目が合いました。  端正な顔の青年の顔でした。その青年が、あなたを見て、必死の形相で手を伸ばしてきます。  ソファーの隙間に人間の顔があり、さらにその手があなたを掴もうとしている。SANチェックです。0/1D3でどうぞ。  手は、そのままあなたを掴もうとしてきます。ここで、回避を振ってください。 →回避成功  手は空を掴み、そのまま諦めたかのように去って行きます。 →回避失敗  手は、恐ろしいほど強い力で、あなたを掴みます。  次の瞬間、あなたの目の前の風景が一変しました。  真っ暗な空間。そこにいたのは、恐怖に顔を歪めた男でした。その四肢からは血を垂れ流し、助けてと叫びながらあなたに向かってきます。  その次の瞬間です。男の体は真っ二つになりました。  何が起こったのか分からない。そんな顔をする男の命の灯は、あっという間に消えました。  そして、気が付くとあなたは元のリビングにいます。  異常な体験に、SANチェックです。1/1D4+1です。 KP向け情報  この男は、シャンによって拷問された男です。  探索者が見たのは、拷問された末の男の最期の姿です。 ●テレビ  テレビは真っ暗です。しかし、すぐ近くにリモコンがあるため、すぐに電源は付けられます。  電源を付けると、砂嵐が映ります。  ざーっと、不快な音が、あなたたちの耳に聞こえることでしょう。 →目星  砂嵐のテレビの中に、一瞬、なにかが映りこんだ気がしました。  人のようでした。詳細は全く分かりませんが、女性なのではないかと、なんとなく思います。 KP向け情報  この女性の正体は、シャンに体を乗っ取られた葵です。  場面は、葵の体を乗っ取ったシャンが、人を拷問し殺すシーンです。 →聞き耳  苦悶に満ちた絶叫が聞こえました。  痛い。苦しい。やめてくれ、お願いだから止めてくれ。そんな悲鳴を嘲笑うかのように、肉を切るような音が聞こえてきます。  そして、可愛らしい女性の笑い声が、聞こえてくることでしょう。 →アイディア  その声は、葵によく似ていると感じます。  しかし、あまりにも声色などが違うので、別人なのではないかと思います。 KP向け情報  テレビに映っている場面は、シャンに体を乗っ取られた葵が、人を拷問して殺すシーンです。  ので、聞こえてきた音は、男の悲鳴。そして葵の笑い声です。 ●宝箱  宝箱は、鍵はかかってなさそうです。  開けると、鈍く光る拳銃が出てきます。弾が三発あるのも、分かることでしょう。 →目星  宝箱の底の板が外れそうだということが分かります。 宝箱の底  底の板をはがすと、そこには、一枚のメモがあります。 「撃ち殺して。きっとそれが最善だから。  救わなくていい。救おうとするのなら、それはきっと茨の道だから。  私が願うのは、あなたたちが無事に帰れることと、もう馬鹿な事が起こらないようにと、ただそれだけだから」 KP向け情報  これは、葵のメッセージです。  葵を救おうとすると、難易度が上がるという意味がこめられてます。  拳銃は、日本の警察官が持っているメジャーなものです。  詳細データを求められた場合、下記のデータを渡してください。 拳銃 スミス&ウェッソン M37 エアーウエイト 1D10×2 装弾数5 耐久力107 ※クトゥルフ神話TRPG2010より ☆部屋を出る  全員で、部屋を出ようとした瞬間です。  がらがら、という音が聞こえました。なにかが崩壊するような、そんな音です。  あなたたちは振り返るでしょう。  振り返った、その瞬間。  あなたたちの視界に、がらがらと崩れる部屋が見えました。  玩具のブロックが少しずつ壊れていくような。そんな映画のワンシーンのような。  そんな光景に、一瞬あなたたちは呆気にとられ、そしてすぐに危機感が襲ってきます。  このままだと、自分達もあの崩壊に巻き込まれるのは確実でしょう。  探索者達が、扉から出ると、そこは廊下でした。  すぐ後ろでがらがらと崩壊の音が聞こえ、やがて、扉も崩れ落ちて。  そこで、止まりました。  さきほどまでいた部屋は、欠片も見当たらず、あるのは、穏やかな夜の空のような優しい黒。  落ちたらどうなるか。探索者には想像する事しか出来ません。  そして、目の前で部屋が崩壊したという、異常な出来事にSANチェックです。1/1D6でどうぞ。 KP向け情報  このイベントは、必ず探索者が拳銃を持って出たら起こしてください。  この真っ暗闇は、探索者達が葵を救おうとするときに、落ちることになる暗闇です。  この暗闇の底には葵の記憶があり、特に重要な「思い出」は扉によって固く閉ざされている。 ☆暗闇  どこまでも広がる暗闇は、まるで穏やかな夜空のようでした。  葵が不思議そうな顔をしながらも、その暗闇を覗き込んだ時です。ふいに、彼女のポケットからハンカチが滑り落ちます。  あ、と声を漏らした次の瞬間、ハンカチは暗闇に吸い込まれるように消え去ります。  探索者が暗闇を覗き込むのなら、底はなく果てしなく続く暗闇の底があります。  不思議なことに、底を覗き込んでいるだけで、穏やかで、優しい安心感を抱くでしょ →目星  奥底に何かきらりと光るものがあった。ように見えました。  それは、様々な色の光で、一際強く赤、青、黄の三色が見えた気がしました。 KP向け情報  そこにある扉が一瞬見えます。が、探索者にはそれがなんなのかは、分からないでしょう →飛び降りる  あなたがこの暗闇に落ちようとすれば、葵が止めてきます。  理由を聞けば、なんとなくざわざわするから、と答えるでしょう。 →それでも飛び降りる  あなたが、暗闇に身を投げた瞬間です。  周囲の景色が一変しました。  次に気が付くと、あなたは身を投げる前……廊下に立っていました。  他の探索者が落ちる所を見守っていたのなら、落ちたはずの探索者が、突然現れたように見えるでしょう。  落ちたはずが、元の場所に戻っていた。そんな不思議な体験をした探索者は1/1D4  落ちた探索者が、突然目の前に現れたのを目撃した人は、0/1D3でSANチェックです。 KP向け情報  自分の記憶を見られるのは、誰だって恥ずかしいものです。つまり、葵は恥ずかしがっているのです。  現時点では、落ちても戻されるだけです。これは、葵が行ってほしくないと強く願っているためです。  もしかしたら、止める葵を無視して落ちたら、葵からの好感度が下がっているかもしれません。  物を落としたのでしたら、聞き耳成功で優しい着地音がしたのが聞こえるでしょう。 ☆廊下  短い廊下です。  左右に扉があり、奥には頑丈そうな扉が見えます。  奥の扉は開きそうにないです。 KP向け情報  左が、両親の寝室。右が、葵の部屋となっています。 奥の扉  奥の扉は、鎖でぐるぐる巻きにされています。  簡単には入れそうにはありません。 KP向け情報  奥の扉は、二つの部屋を探索すると開く仕組みになっています。 ☆右の部屋(葵の部屋)  中を開ければ、そこは白を基準とした可愛らしい女の子の部屋です。  勉強机、本棚、ベッド等々の家具があります。窓には、薄いピンク色のカーテンがかかってるのも、見えるでしょう。  部屋に足を踏み入れたのでしたら、後ろの方で、葵が「あれ?」と不思議そうな声をあげるでしょう。 〇最初に右の部屋(葵の部屋)に入った場合  葵も部屋の中に入ると、あ、と驚いた声が聞こえてきます。  見れば葵は目をまんまるにして、部屋を見つめています。 「私の部屋だ……」  呆然とした呟きを、あなたたちの耳はとらえる。 KP向け情報  葵の記憶を元に作られた空間なので、葵の部屋と瓜二つです。  ここで葵に詳しい情報を聞くと、以下の情報を聞き出します。 ・置かれているものや、家具など全て自分の部屋とほぼ同じである ・どうして自分の部屋と同じなのか、分からない  心理学で、本当に疑問に思っていると分かります  勿論、葵の記憶を元に作られた空間なので、当然葵の知る部屋と全く一緒です。 〇先に左の部屋(両親の部屋)に入った場合  葵はさっと顔を青ざめさせます。 「な、なんでこんなにそっくりなの……!?」 「どうして、でも確かに私の部屋だし……じゃあさっきの部屋って、やっぱり…………」 「やだ……気味が悪い」 KP向け情報  自分の部屋が、自身の記憶と寸分たがわず同じなこと。  そして、さきほどの両親の部屋も、自身の記憶と全く同じものだったことを確信を得て、非常に恐怖しています。  探索者が安心させるような言葉を掛けると、落ち着き、取り乱した事に対して謝罪をするでしょう。  そして、記憶の中の部屋と同じであると伝えます。  無視をするなどの行動をとった場合、どうして、どうして。と時折呟きながら顔を青ざめさせているでしょう。  ここで、KPは出来たらPLにとって葵に愛着が持てるような、そんなRPを行うと良いでしょう。  葵のキャラをPCに合わせて変えるなど自由です。 ●勉強机  可愛らしい筆箱。大学ノートが置かれています。  綺麗に整理整頓されている机です →アイディア  勉強机を眺めていたあなたは、ふとあることに気が付きます。  その考えを裏付けるよう、部屋全体を見回し、確信を得るでしょう。  この部屋には「青」という色がないのです。  「青」だけを抜き取られたかのように。色鉛筆も、ボールペンも、カレンダーもノートにも、青はないのです。  本来青があるはずの場所の代わりにあるのは、不透明な色だけ。まるで青だけを無理やり抜き取ったかのようでした。 KP向け情報  探索者に、青という色を印象づかせるきっかけとなります。  青は海の色です。海は、葵が死亡する原因となった場所でもあります。  死ぬ瞬間という最も嫌な記憶を、葵は無意識に封じている。それ故に、葵の記憶を元に作られたこの部屋に青はないのです。 ●本棚  若い女性が持っていそうな漫画や雑誌などが、入っていました。  大学の参考書や、英語の辞書なども見えます。 →図書館  一冊の分厚い日記を発見します。 「○月○日  目を覚ましたら、病院だった。どうやら私は、旅行先の海の崖から落ちてしまったらしい。  生きているのが奇跡だったって、お医者さんは言ってた。  どうやら私は幸運だったみたい。でもしばらく入院は必要だって。  入院している間、お父さんが暇だろうということで、日記帳くれた。せっかくだから、これに書いていくことにする。 ○月△日  私の体は問題なかったみたいで、すぐに退院出来た。  びっくりするくらい、体は丈夫みたいで、すぐに退院出来た。  久々の家はやっぱり安心する。でも安心しすぎたみたいで、うっかり眠っちゃった。 △月□日  最近、いつの間にか眠っている。  疲れてるのかな。 △月△日  …………おかしい。  おかしい。おかしい。おかしい。おかしい。おかしい。 △月×日  私が私じゃない。  私の記憶のない間、私は勝手に動いている。なんで。  私が寝ていると思っていた時間、私は意思を持って動いてたのだ ×月×日  病院に行こう。そう思った瞬間、私の意識はまた落ちてしまった。  次に目が覚めると、私は真っ暗な暗闇の中にいた。  そこで、私は、「私」の中から「私」のしていることを見た。信じられない光景だった。  「私」が、人を殺している。そんな光景。 ー月ー日  地獄だ。  一度見てしまってから、その光景は、離れることはない。  むしろ、それ以降私の意識が落ちる度「私」が人を殺すシーンを何度も見る羽目になっている。  ある時は、サラリーマン風の男。あるときは、優しそうなおばあさん。またある時は……。  そんな人達が「私」の手によって、無残に殺されている光景。私はただ見ていることしか出来ない。  私に出来るのは、ただ見ているだけなのだ。 ー月ー日  死のうとしても死ねない。  それどころか、私の意識は落ちている時間がどんどん短くなっている。  誰か、私を、ころし」  SANチェック 0/1D3 KP向け情報  これは、葵の日記です。  葵が死んで、シャンに取りつかれた所から開始しています。  今いる葵に、この日記を見せても、なんのことかさっぱり分からないと首をかしげます。 ●ベッド  女の子らしく可愛いデザインのベッドです。 →目星  ベッドの下から、うっすら埃をかぶったメモを発見します。 「少女に声を掛けられた。と思った次の瞬間、不気味な空間に閉じ込められた。  そして現在、俺は不気味な化け物に追いかけられている。一般人なら既にやられてただろうが、魔術師である俺は、なんとか逃げられたのだ。  だが、逃げられたのは一時的だ。ここはやつのテリトリー。恐らく、彼女に憑く悪いものだけを殺せれば、きっとここから脱出できる。  そう思って、悪いものだけを撃ちぬく弾を作った。のだが。  弾は化け物に取られてしまった。弾を壊すのは流石に無理だったようだが、化け物は弾をどこかに隠してしまった。  もう俺は逃げきれない。だから弾を取り戻すことは出来ない。弾はどこに隠されたのだろうか。  誰も……いや。きっと、あの少女が絶対に近づかない、あるいは、近づきたくない場所。そこにあるのだろう」 KP向け情報  これは、シャンに捕まった魔術師のメモです。  弾あることを示す。又、その弾が少女が絶対に近づきたくない場所。とPLへのヒントとなっています。 ●窓  窓はカーテンによって閉ざされています。 →カーテンを開ける  カーテンを開けると、窓の外がよく見えました。  果てしなく続く闇。それを背にした、妙齢の女性の姿。  長い黒髪をたらし、淡い微笑みを浮かべた女性。彼女は、あなたたちに一歩近づき手を伸ばし、  次の瞬間、その女の姿は骸骨へと変わっていました。  目玉がぎょろりと蠢きます。骸骨は窓の外にただ佇み、骨だらけの顔をあなたたちに向けました。  そして、にやりと。そう笑うのです。  SANチェック。1/1D4+1 →窓ガラスを開ける、窓ガラスを割る  あなたたちを遮るものがなくなった瞬間です。  そこにあったのは、骸骨ではありませんでした。  干からびた人間の肉片。ただそれが、そこにあったのです。  肉片が、そっと微笑みました。 「−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−っ」  断末魔のようなものをあげた瞬間、その肉片は部屋中に四散しました!  その破片は、あなたに。あなたたちに、べったりとついたことでしょう。  SANチェックです。1/1D6でどうぞ。 KP向け情報  シャンによって殺された犠牲者です。  特に何もしてきませんし、特に何も反応も示しません。ただ、そこに立ちあなたたちをニコニコと見つめているだけです。  もしもPCが窓ガラスを割った場合は追加SANチェックが発生します。 ☆右の部屋(葵の部屋)を出た ※こちらは、左の部屋(夫婦の寝室)に行ってない段階でのイベントです。  あなたたちが部屋を出ると、そこはさきほどと変わりのない廊下が広がっています。  と思った瞬間でした。  唐突に、背後でがらがらと崩れる音が響きます。  呆気なく。まるで積み上げた積み木が壊れていくように。  がらがらと音をたてて、さきほどまでいた部屋が崩れ落ちていきます。  残ったのは、無限に広がる闇でした。あるのは、穏やかな夜の空のような優しい黒でした。  しかし、恐怖は感じない不思議な暗闇です。 KP向け情報  これより下の情報は、最初の目覚めた部屋を出た時に起こったイベントと全く同じです。  変更した点はありません。 →目星  奥底に何かきらりと光るものがあった。ように見えました。  それは、様々な色の光で、一際強く赤、青、黄の三色が見えた気がしました。 KP向け情報  そこにある扉が一瞬見えます。が、探索者にはそれがなんなのかは、分からないでしょう →飛び降りる  あなたがこの暗闇に落ちようとすれば、葵が止めてきます。  理由を聞けば、なんとなくざわざわするから、と答えるでしょう。 →それでも飛び降りる  あなたが、暗闇に身を投げた瞬間です。  周囲の景色が一変しました。  次に気が付くと、あなたは身を投げる前……廊下に立っていました。  他の探索者が落ちる所を見守っていたのなら、落ちたはずの探索者が、突然現れたように見えるでしょう。  落ちたはずが、元の場所に戻っていた。そんな不思議な体験をした探索者は1/1D4  落ちた探索者が、突然目の前に現れたのを目撃した人は、0/1D3でSANチェックです。 KP向け情報  自分の記憶を見られるのは、誰だって恥ずかしいものです。つまり、葵は恥ずかしがっているのです。  現時点では、落ちても戻されるだけです。これは、葵が行ってほしくないと強く願っているためです。  もしかしたら、止める葵を無視して落ちたら、葵からの好感度が下がっているかもしれません。  物を落としたのでしたら、聞き耳成功で優しい着地音がしたのが聞こえるでしょう。 ☆左の部屋(両親の寝室)  そこは、シンプルな部屋でした。  ダブルベッドに、棚。クローゼット。机。等々の家具が置かれています。  この部屋を見たあなたは、夫婦の寝室ではないかと思うでしょう。  部屋に足を踏み入れたのでしたら、後ろの方で、葵が「あれ?」と不思議そうな声をあげるでしょう。 〇先に右の部屋(葵の部屋)に入ってた場合  葵はさっと顔を青ざめさせます。 「え……どうして……? 気のせい……ううん違う……だって私の部屋もそっくりだったもん……」 「なんで、なんで私の家と同じなの……!? なんで、なんで私の親の部屋と同じなの……!?」 「もういや、さっきのリビングも、うちと全く同じだった。気味が悪い……!!」 KP向け情報  自分の家と全く同じ部屋がいくつもあるので、葵はかなり怖がっています。  探索者が安心させるような言葉を掛けると、落ち着き、取り乱した事に対して謝罪をするでしょう。そして、記憶の中の部屋と同じであると伝えます。  無視をするなどの行動をとった場合、どうして、どうして。と時折呟きながら顔を青ざめさせているでしょう。  ここで、KPは出来たらPLにとって葵に愛着が持てるような、そんなRPを行うと良いでしょう。  葵のキャラをPCに合わせて変えるなど自由です。 〇最初に左の部屋(夫婦寝室)に入った場合 「あれ……ここ…………」  と言って、葵は不審な顔をしながら首を傾げます。 「うーんでも珍しくないだろうし……偶然っていう可能性も……」 KP向け情報  葵は、この部屋が両親の寝室と酷似していることに対し、不信感を抱いています。  怪訝な顔をしながら、この部屋の詳細を聞けば、両親の部屋によく似ていると話してくれます。  両親の部屋はよく訪れていますが、流石に自分の部屋ではないため、そっくりなだけなのかと疑っています。それと同時に、気味悪さも感じています。  心理学で、本当に疑問に思っていると分かります  勿論、葵の記憶を元に作られた空間なので、当然葵の知る部屋と全く一緒です。 ●ダブルベッド  シーツの乱れなどから、生活感が見える大きなベッドです。 →目星  あなたは、枕の中に何かが入っていることに気が付きます。  取り出してみれば、それは一冊の本でした。タイトルはありません。 「化け物について。  まぶたのない目。10本の足。半円形の固い翼。  そのあまりの禍々しさは、見ているだけで吐き気を催すものだった。  その化け物は、あまり姿を現さない。  いつも誰かの体を奪い取っているようだ。そして、その体を使い、多くの人を殺しているのだろう。  その化け物を、私は昔、知り合いの魔術師から聞いた覚えがある。  シャッガイからの昆虫。  とある神を崇拝するこの種族は、退廃的な、嘆美主義的な「異常の楽しみ」のために時間を使うことが出来るのだ  そいつに勝つことは出来ないだろう。その化け物に、人間はかなわない  人間は絶対そいつに叶わない。だから、やつに立ち向かうのは無理だ。必ず勝てる手段がない限り、それは倒せない。」  本は、それ以外にもシャッガイからの昆虫についての、冒涜的な文で埋められていました。  その内容は、常識とはかけ離れていて、あなたは本能的な恐怖を感じるでしょう。  SANチェック。0/1D4.そしてクトゥルフ神話技能1どうぞ。 KP向け情報  こちらは、魔術師によるシャンについてをまとめたものです。  ここで無謀に向かって行った際は、危険だということをPLに伝える情報でもあります。 ●棚  棚の上に、一冊の日記帳があるのを発見します。  分厚い、黒の日記帳です。  それを読み進めていくと、どうやら葵の父親らしきものの日記のようです。 「△月○日  今日は、妻と葵と一緒に旅行に出掛ける。  せっかくだから、海が綺麗に見える場所の宿をとった。  妻と葵に楽しんでもらえるよう、頑張らないとな  △月△日  宿に着いた。綺麗な宿だ。  葵も妻も喜んでくれたようで嬉しい。  宿の女将から、海が綺麗に見える岬を聞いたので、後で連れて行こうと思う。  △月×日  間違いだった。  間違いだったのだ。  葵をあそこに連れて行くべきではなかった。  柵がもろくて、まさか、まさか葵が落ちてしまうなんて。  病院に連れて行かれたが、医者の見立てだと希望はないらしい。  ああなんで。なんで私は。葵、ごめんな。こんな駄目な父親で、ごめんな。何もできなくて、ごめんな。  ○月○日  葵が、生き返った。  心肺停止状態で、望みはないと言われてた葵が。  奇跡だと医者は言っていた。  まるで、神によって再び命を吹き込まれたようだと。  ああ、ありがとうございます。ありがとうございます。  ○月×日  葵の様子がおかしい。  驚異の回復により、あっという間に病院を退院した葵だが、時々まるで別人のようになる。  そして、どうやらあの岬はトラウマのようで、テレビで似たような岬や崖が映っただけで、気持ち悪くなってしまうらしい  さらに、青という色もあまり好まなくなってしまったようだ。やはり、海を連想させるからか。」  これ以降は、平凡な日常と、別人のようになってしまっている葵についての心配が書かれているだけです。 KP向け情報  これは、葵の父親の日記です。  葵がどういった経緯で死んだかが分かるようになっています。  PLにとっても、葵のトラウマについてのヒントとなっています。  この日記を葵に見せると、父親の日記であることは確信をもって答えます。  が、自身が崖から落ちたことについては、さっぱり覚えていないと答えるでしょう。葵が覚えているのは、旅行に行く寸前までだから当然です。 ●クローゼット  クローゼットを開けますか?  開けていいんですか? →開けない  開けないのですか。  ああ、それは残念でしたね。あなたのこの先が、良いものになることをお祈り申し上げます。 →開ける  では、あなたがそれを開けてしまうと。  二つの双眸と、目が合いました。  優しい目です。  ふんわりと細められた目からは、愛情を感じることでしょう。  それと同時に、目の前にあるのが首から下がえぐり取られたものだということに、恐怖を感じるでしょう。  SANチェックです。1/1D4+1です。 →目星  よく見てみると、その顔の隣にメモが置かれているのが分かります。  血だらけのメモです。 「ここは私の希望の場所。  私に残された最後の砦。  私の一部を切り離して作った大切な場所。  私が最も安心する場所。  私が最も長くいた場所。  形をつくれたのは、ここだけ。  一番長くいたから。一番安心する場所だから。だから、こうして形に出来た。  暗闇の底にあるのは、私の残骸。形になれなかった私の残骸。  そこにいるのは、あなたが撃ちぬく、地獄を知る前の私。」 KP向け情報  この顔は、シャンによって殺された人の顔です。ひたすらニコニコしています。  メモは、ここが葵の記憶を元に作られたこと。暗闇の底には、葵の記憶の欠片があること。そして、撃ちぬくのはそこにいる葵だということ。  これらをPCに伝えるためのヒントです。記憶がある時の葵によって書かれたメモです。  当然、葵はこれがなんなのかさっぱり分かりません。首を傾げるだけです。  しかし、引っかかるものはあるようで、深く問い詰めれば、大事なことが書かれている気がすると口にするでしょう。 ●机  茶色の机の上には、特に何も置かれていません。  引き出しを開けると、封筒やら小難しいことの書かれた書類などが見えるでしょう。 →目星  重要な書類の中に、一枚気になる紙を発見します。 「暗闇の底にあるのは、私の残骸。  辛いことも楽しいことも、私が、一生思い出したくないあの地獄の始まりも、全てあの暗闇の底にある  あそこにいくのはやめなさい  そこにいる私が、「私」である限り。私はあなたたちが暗闇に落ちるのを拒絶する」 KP向け情報  暗闇の底にあるもののヒントです。  また、これは葵が今の葵のままだと、暗闇に落ちるのを拒絶されるという意味です。  ……逆を言うのなら。葵が、葵ではなくなりシャンに乗っ取られた時。暗闇には拒絶されません。 ☆左の部屋(両親の部屋)を出た ※こちらは、右の部屋(夫婦寝室)に行ってない段階でのイベントです。  あなたたちが部屋を出ると、そこはさきほどと変わりのない廊下が広がっています。  と思った瞬間でした。  唐突に、背後でがらがらと崩れる音が響きます。  呆気なく。まるで積み上げた積み木が壊れていくように。  がらがらと音をたてて、さきほどまでいた部屋が崩れ落ちていきます。  残ったのは、無限に広がる闇でした。あるのは、穏やかな夜の空のような優しい黒。  しかし、恐怖は感じない不思議な暗闇です。 KP向け情報  これより下の情報は、最初の目覚めた部屋を出た時に起こったイベントと全く同じです。  変更した点はありません。 →目星  奥底に何かきらりと光るものがあった。ように見えました。  それは、様々な色の光で、一際強く赤、青、黄の三色が見えた気がしました。 KP向け情報  そこにある扉が一瞬見えます。が、探索者にはそれがなんなのかは、分からないでしょう →飛び降りる  あなたがこの暗闇に落ちようとすれば、葵が止めてきます。  理由を聞けば、なんとなくざわざわするから、と答えるでしょう。 →それでも飛び降りる  あなたが、暗闇に身を投げた瞬間です。  周囲の景色が一変しました。  次に気が付くと、あなたは身を投げる前……廊下に立っていました。  他の探索者が落ちる所を見守っていたのなら、落ちたはずの探索者が、突然現れたように見えるでしょう。  落ちたはずが、元の場所に戻っていた。そんな不思議な体験をした探索者は1/1D4  落ちた探索者が、突然目の前に現れたのを目撃した人は、0/1D3でSANチェックです。 →飛び降りた後のアイディア  あなたは、今は、この暗闇の底にはたどり着けないと思います。  まるで誰かに拒絶されているような。そんな感覚を抱きます。 KP向け情報  自分の記憶を見られるのは、誰だって恥ずかしいものです。つまり、葵は恥ずかしがっているのです。  現時点では、落ちても戻されるだけです。これは、葵が行ってほしくないと強く願っているためです。  もしかしたら、止める葵を無視して落ちたら、葵からの好感度が下がっているかもしれません。  物を落としたのでしたら、聞き耳成功で優しい着地音がしたのが聞こえるでしょう。 ☆二つの部屋を探索し終えた  あなたが部屋を出た瞬間。  後ろで、音をたてて部屋が崩れ落ちました。  呆気なく。あっという間に。  既にそこは、廊下と、奥の扉以外はありません。  辺りは、真っ暗闇です。  途方もない暗闇が広がっています。 KP向け情報  ここで、探索者たちが暗闇を調べようとするのでしたら、その時間をとると良いでしょう。  KPは、頃合いを見て次のイベントを起こしてください。 ☆迫るタイムリミット  唐突に。  爆発するような音が、どこからともなく聞こえてきました。  その音は一度だけではなく、何回も響き始めます。  あなたが驚いていると、葵が「こっち!」と叫び、奥の扉を指さします。  いつの間にか鎖は外れており、扉は開くようになっていました。  あなたたちは、奥の扉へと走るでしょう。 ☆奥の部屋  奥の部屋は、特に家具などのない質素な部屋でした。  クリーム色の壁と、クリーム色の床。  ただ、奥の壁に張り紙だけがされています。  部屋に足を踏み入れて、扉を閉めると、爆発音は聞こえなくなりました。張りつめた静寂が、辺りを支配してます。 KP向け情報  ここで、葵の様子を聞かれたのでしたら、少し思い詰めた顔をしていると答えると良いでしょう。  ただ、何を聞いても「ちょっとね……」とだけしか話しません。どうしてもと聞きだすのでしたら、「何か思い出せそうな気がする」と渋々答えます。  しかし、探索者が張り紙を見終わった後のイベントが起きるまで、それを思い出すことはありません。 ●張り紙 「私は殺した。  たくさんの罪のない人を殺した。  もう自分の意思で、それは止められない。  お願い。  あなたに、少しでも私を思いやる気持ちがあるのなら。  少しでも、誰かを救いたいという気持ちがあるのなら。  お願いです。  海野葵を。私を、撃ち殺してください」 KP向け情報  探索者たちが、張り紙を読み終わった。共有をした、等をしたのでしたら。  ☆記憶と葵と。 のイベントを発生させてください。 ☆記憶と葵と。 「ああ、そっか。思い出した」 「私は、そう。海に、海に落ちて、それから」 「……もう分かったでしょう。私が何をしてきたのか。ねえ、早くあの化け物にまた乗っ取られる前に、私を殺して。  もう嫌なの。誰かが死ぬのを見るのは  記憶を取り戻した葵は、涙を浮かべながらあなたたちに殺してと頼んできます。  それと同時に、さきほどまで止んでいた爆発音が聞こえだします。  何回も。何回も何回も何回も続く爆発音は、次第に近づいてきているように感じるでしょう。 「あいつがやってきた。あいつが来たら、また私は乗っ取られる」 「乗っ取られたら、私はあなたたちを殺す。だからその前にお願い。  私がいなければ、あいつはきっとあなたたちに手出ししない……ううん出来ないから」 「だから、早く。私を殺して」 撃ちますか? 撃ちませんか? KP向け情報  ここで葵を撃ちぬくのでしたら、後述の☆元の日常 エンドです。  撃たない。という選択肢を取るのでしたら、イベント☆シャンの襲撃 を発生させてください。  また、PL達が悩むようでしたら時間制限を付けると良いでしょう。時間制限をを超えると、撃たないの選択肢になるようにするのもお勧めです。  なお、葵が思い出してからは、探索者の疑問に余裕があれば答えてくれるかもしれません。 Q,ここはどこか A,ここは自分の記憶の一部を切り取って作った空間。この部屋以外がシャンの襲撃により崩れ、自分の記憶が戻った Q,シャンについて A,絶対に勝てない。あれは恐ろしい化け物だ。 Q,外の爆発について A,あれは、シャンが襲撃している音。自分の体を再び乗っ取ろうとするために、ここに向かってきている Q,救う手段は A,ない   ☆シャンの襲撃  扉が破壊される音が響きます。  驚き、あなたたちはそちらを見ます。見てしまうでしょう。  そこにいたのは、おぞましい化け物でした。  まぶたのない目。頭のところから曲がりくねって出ていて、両先端がくっつき合っている巻きヒゲ。  光沢のある触肢に覆われた10本の足。そして半円型の翼。  そんな化け物が、憎悪に満ちた目であなたたちを睨みつけます!  SANチェック0/1D6  あなたたちが茫然としている隙に、猛スピードで化け物が葵の方へ飛んでいき、あっという間に葵の体に溶け込んでいきます。  それと同時に、葵の雰囲気が一変しました。  ぞくり、と体が震えます。本能が、警報を鳴らし始めます。  そこにいたのは、葵でした。  けれど、そこにいたのは葵ではありませんでした。  そこにいたのは、葵の姿をした化け物です。  彼女は、いつの間にかその手に銀色に輝くナイフを持っていました。  淡く微笑むその姿は、あなたの知る葵ではありません。 「ああ、苦労した。この女、まさかこんな空間作り上げるなんて。せっかく死んだ所を助けてあげて、私の手足にしてあげてるのに、ひどい話だよ。  さあて、早速生贄を殺そうか。とびきり残虐で、惨い殺し方をしてあげ…………っ、な、なんだ体が……!?」  あなたたちへと一歩、近づこうとした瞬間。  彼女は苦しみを帯びた表情を浮かべ、胸を押さえました。そのまま、荒い息を繰り返しながらその場に座り込みます。 →アイディア  ふと、あなたは壊れた扉の向こうに気が付きます。  扉の向こうは、もう既に廊下はなく、あるのは不思議な暗闇だけです。  深い暗闇。けれど、このままここにいても、事態は何も解決しないことに変わりはありません。  幸い、葵の体を乗っ取った化け物は、まだ立ち上がり動くことは困難に見えます。 →葵へ呼びかける  反応はありません。  「っくそ、邪魔するなんて」という苦々しい声が聞こえてきます。 →葵に対して攻撃など  ……よろしいのでしょうか?  これは、葵の体です。  そして、彼女は今化け物に則られています。  本当に、攻撃してもよろしいのですか?  もう一度聞きます。本当に、よろしいのですか?  →はい  では、あなたが襲いかかろうとした瞬間。  激しい痛みが、あなたを襲います。  苦し紛れに、化け物があなたにナイフを投げつけたのです。  その人間とは思えぬ力に、あなたの命の灯は消え去るでしょう。  ロストエンド KP向け情報  探索者がどうしようかと迷っているようでしたら、扉の奥に進むのを促すと良いでしょう。  なお、攻撃すると、問答無用のロストです。再三、探索者及びPLに確認を取りましょう。  なお、攻撃されて他の探索者が残っていても、まだまだシャンは武器を持っているので、ロストは免れません。 ☆闇の向こうへ  あなたが扉の向こうに行けば、その体はふわりと浮きます。  そのまま、重力に従い、あなたたちは落ちていき、やがて地面に激突――  せずに、ふわりとまるで魔法のように着地することが出来ました。  暗闇の底は、金平糖のような色とりどりの欠片が散らばる不思議な所でした。  そして、赤、青、黄の、三つの扉があるのが見えるでしょう。 →目星  金平糖のような欠片の一つひとつは、微妙に色が違うことが分かります。  さらに、その欠片には学校の景色や、誰かと一緒に話している絵などが、動画のように小さく映っていることが分かります。  →アイディア   これは、海野葵の記憶なのではないかとあなたは思います。 扉  扉は、人一人が通るのは簡単そうです。  三つとも同じで、色以外に変化は見えません。  それと同時に、あなたたちが落ちてきたはるか上から、爆発音らしきものが聞こえてきました。 →聞き耳  赤い扉からは、何も聞こえません。  青い扉からは、波の音が聞こえてきます。  黄色の扉からは、軽快な音楽が聞こえてきます。 KP向け情報  赤い扉の向こうは、葵の通う大学があります。  青い扉の向こうは、海です。葵が死亡する原因となった崖があります。  黄色い扉の向こうは、演劇をやっています。  正解の扉は、青い扉です。 ☆扉を選ぶ  その色の扉で、本当によろしいんですね? KP向け情報  青の扉以外を選んだのでしたら☆終わらない悪夢 エンドになります。  青の扉を開けたのでしたら☆始まりの青 を参照してください。  なお、扉をちょっと開けて覗くという宣言の場合、見えるのは暗闇のみです。が、KPはPLに合わせて、景色が見えることにしても良いかもしれません。 ☆始まりの青  扉を開けると、崖でした。  柵がなく、すぐ真下で、重たくも激しい音をたてながら波が岩にぶつかります。  空はどんよりと灰色がかっており、今にも雨が降り出しそうです。  吹く風は潮気が含まれており、嫌な感じがします。  あなたたち全員が入ると、青の扉は勝手に閉まります。 →目星 あるいは弾を探すという宣言  あなたたちは、茂みの影にそれを発見します。  それは、一発の弾丸でした。  ギラリと輝く弾丸からは、不思議な感覚になります。手に取るのでしたら、力強い温かさを、あなたは感じるでしょう。 弾丸  見た目は至って普通の弾丸です。今持っている拳銃に合う弾だと、あなたは分かるでしょう。 →拳銃  この弾は、見た目こそ普通の弾ですが、今まで見たことのない不思議な弾だと分かります。 KP向け情報  探索者が、この弾を拳銃にセットした辺りなど、KPは頃合いを見て☆その弾丸が貫くものはを発生させましょう。  ☆弾丸が貫くものは  ふいに、青の扉が破壊されます。  あなたたちが驚けば、そこにいたのは葵の姿をした化け物です。 「ああ見つけた!! 手間らせやがって! 八つ裂きにしてやる!!!」  そのまま、化け物はナイフを持ち襲いかかろうとしてきます。 KP向け情報  どういう風に撃つか。撃つまでの過程は、PLさんに合わせてKPが処理をすると良いでしょう。  拳銃ロールするのでしたら、弾丸の不思議な力により、+補正をたくさん差し上げることも可能となります。  PLさんの拳銃技能に合わせて、90やそのくらいになるようにすると、良いかもしれません。 →化け物に撃つ  弾丸は、葵の胸元を貫きました。  化け物は一瞬驚いた顔をした後、苦痛に顔をゆがめ、断末魔をあげます。  そして、葵の瞳は力なく落とされ、その体はぐらりと倒れます。  その動きに呼応するように、周りの景色が一変します。パリンッ、とガラスが割れるような音と共に、周囲の景色がパズルのピースのように割れたのです。  代わりに現れたのは、真っ白な空間でした。  そして、あなたたちの立つ地面も、みしみしと亀裂が入り始めます。  一際大きな亀裂が、あなたたちと葵を裂くように入ります。 KP向け情報  ここで、葵の元へ行くのでしたら、DEX×5のロールや跳躍などが必要となるかもしれません。  勿論、入れないと判断するのも良いでしょう。  葵の手を取ったかどうかで、さらにエンドが分岐します。  葵の手を取った場合は☆海野葵 エンドを。  葵の手を取らなかった場合は☆穏やかな日常 エンドとなります。 ☆海野葵  あなたが手を取れば、葵の目が驚いたように開かれます。 「どうして?」 「いいよ、たすけなくて。私は本来死んだ人間なんだよ」 「だから、いいよ。たすけようとしなくて、いいよ」  そう言います。 KP向け情報  ここで手を離すのでしたら、☆穏やかな日常 エンドとなります。 →離さない  葵は、あなたの固い決心を見て、困ったような顔をして、ふにゃりと笑います。 「ありがとう」  嬉しそうな声が聞こえました。  そして、あなたたちの視界は次第に白く薄れていき、意識は遠のいていきます。  気が付くと、そこはあなたたちが歩いていた場所でした。  あなたたちは、ぼーっと突っ立っていたようです。  あれは夢だったのでしょうか。  あなたたちが驚いていると、ふと真っ白なワンピースの少女が、ふらりと倒れます。  駆け寄ると「めまいが……」と言い、あなたたちの顔を見て驚きます。  ワンピースの少女は、海野葵でした。  彼女は、あなたたちを見ると、とても嬉しそうな、本当に嬉しそうな笑顔を浮かべ、 「もう、私を撃とうとしなくて大丈夫みたいです」  そう、告げました。 END クリア報酬 シャンのみを、弾丸で撃ちぬいた 1D10 葵の手を取り、現実世界に戻ってきた 1D6 ☆穏やかな日常  あなたの視界は白く濁っていきます。  薄れゆく意識の中、あなたは、穏やかな笑みを浮かべる葵の姿を見ます。 「ありがとう。悪いのを撃ってくれて、ありがとう」 「さよなら」  そう、涙ぐんだ声を最後に。  あなたたちは、意識を失いました。  ふと気が付くと、あなたは元いた場所に立っていました。  あなたたちは、ぼーっと突っ立っていたようです。  あれは夢だったのでしょうか。  それは分かりません。  けれど、あなたたちは穏やかな日常に戻って来たのは確かのようです。  黒いワンピースを着た少女も、白いワンピースを着た少女も見かけません。  あなたたちは、穏やかな日常を再び過ごすでしょう。 END クリア報酬 シャンのみを、弾丸で撃ちぬいた 1D10 ☆元の日常  あなたたちが葵を撃ちぬけば、彼女は苦痛に顔を歪ませます。  そのまま、その場に座り込みました。  そして、あなたたちを見上げ、その唇を動かしますが。  それが声になるよりも先に、周囲の景色が一変します。あなたの視界は、あっという間に暗闇に包まれました。  ふと気が付くと、あなたは元いた場所に立っていました。  自分は何故こんな場所に突っ立っているのだろう。  あなたは疑問に思いながらも、元の日常へ戻って行くでしょう。 END クリア報酬 葵を撃ち、彼女の願いをかなえた 1D3 ☆終わらない悪夢 ーー赤の扉ーー あなたたちが入れば、そこはとある大学の廊下でした。 がやがやと生徒たちの声が聞こえてくる中、あなたたちは唐突に、自分がどうしてここにいるのか分からなくなります。 そのまま、あなたたちの意識は溶けるように消えていきました。 ロストエンド ーー黄色の扉ーー あなたたちが入れば、そこは演劇を行っている劇場でした。 劇の演者たちの声を聴きながら、あなたたちは唐突に、自分がどうしてここにいるのか分からなくなります。 そのまま、あなたたちの意識は溶けるように消えていきました。 ロストエンド ☆拳銃ロールに失敗した場合  銃弾はあらぬ方向へ向かいます。  その瞬間、それはにやりと笑い、あなたたちは死の絶望を味わいます。 ロストエンド