「美味しいね、モグモグ」 ☆利用規約 ・Twitterなどのネット上にこのシナリオのURLのみを貼ることを禁止します。  このような行動を発見した場合、然るべき処置を取らせていただくのでご了承ください ・シナリオのネタバレを公開するのはお控えください。  黒幕の存在等を出す場合、他者が見られないようにするか、ネタバレ注意と一言添えるなりの配慮をお願いします。 ・これらの処置があまりにも取られていないと判断した場合、予告なしに非公開にする可能性があります。 ・シナリオ改変、動画使用などはオーケーです。  なお、このシナリオを使用した際のトラブルの責任は一切負いません。 ・使用報告や質問等何かあればTwitterへ  ネタバレ部分の質問でしたら、DM等のご使用をお願いします  雪空鈴音のTwitter→@1104rika08021 あらすじ  穏やかな休日。探索者達は、観光あるいは気まぐれと、様々な理由で森林浴にきていた。  しかし、ある程度進むと一軒の屋敷に辿り着く。  いつの間にか周囲は薄暗く、戻ろうとしても小屋の前に辿り着いてしまう。おまけに雨まで降ってくる。  仕方がなしに、探索者は小屋の中に入ることだろう。  その入り口がなんなのかすら分からずに。 推奨技能 目星、精神分析 対象人数 1人〜4人 プレイ時間 2〜3時間 ※このシナリオはSAN値チェック多めです。  肉体的な死を迎える可能性は低いですが、SANの低い方は廃人となる可能性があります。  発狂したい!不定入りしたい!というような方に対して回すのが向いているかもしれません。  多くの方が、不定入りしないようにと四苦八苦することが予想されます。 舞台  ある林にある小屋が舞台です。しかし、この小屋はどの地図にも載っておらず、小屋の存在を知っている人すらいません。  小屋は見た目は窓がないことが少し不思議なくらいで普通の小屋ですが、中へ入ると奥へ続く扉があります。  不思議なことに、またドアを開けるとまた奥に続くドアがあります。どう見ても、外から見た小屋のサイズよりも多い部屋数です。  部屋は合計八部屋ありますが、八番目の部屋は食べた者を消化する部屋なので、実質探索するのは七部屋となることでしょう。 KP向けの情報  この小屋の正体は、ツァトゥグァの身体です。ツァトゥグァが、安心安全お手軽に人間を食べれるように、自分の身体の一部を小屋として顕現させたのです。  ツァトゥグァは人間をより美味しく味わおうと、小屋の中に入った人間を恐怖させようとしてくる。これが、部屋の中で起こる怪奇の原因となります。  この小屋は、ツァトゥグァが満腹になるか、あるいは消す呪文を使用するかのどちらかの方法しかない。  なお、ツァトゥグァは既にもう何人もの人間を食べているため、あと一人食べれば満腹になる状態である。  そのため探索者達が脱出するためには、誰か一人を犠牲にするか、七番目の部屋にある像を壊すかのどちらかとなります。  この小屋には、探索者達よりも前に入った人間が残してくれたメモがあります  その人間たちも、探索者達と同じように小屋に入ってしまい異常な出来事に遭遇しています。  そして、一人が狂気に陥り、仲間を殺していってしまいました。その仲間を殺した人間は、七番目の部屋で今にも息絶えようとしています。 ☆導入  穏やかな休日。探索者達は、観光あるいは気まぐれと、様々な理由で森林浴にきていました。  並ぶ木々に癒されつつ、あなたたちは道を歩いて行きます。  が、あなたたちが歩いている内にだんだんと雲行きが怪しくなっていき、ぽつぽつと雨が降ってくることでしょう。  それはあっという間に大雨となり、早くどこかに雨宿りしなければ風邪を引いてしまうことでしょう。  どうしようか、と焦るあなたたちの視界に、ふと小さな小屋を発見します。 ☆小屋  小さな小屋です。一体どんな目的で作られたのかは分かりません。綺麗、というほどではありませんが、汚くもありません。  窓のついてない質素な扉が、ただあなたたちの前に佇んでいます。  この小屋を見た探索者達は全員知識ロールを行ってください。 →知識  あなたたちは、地図にはこんな小屋載っていなかったことに気が付きます。 →目星  至って普通の小屋。と思ったのですが、よく見てみるとその小屋には窓がないことに気が付きます。 →来た道を引き換えす  あなたたちが来た道を引き返そうとした瞬間です。  どこからか雷鳴が轟き、驚いている間に何本もの木があなたたちの前に倒れてきます。  なにをどうやっても、その木を超えることは不可能でしょう。あなたたちは、引き返すことはできないと悟ることでしょう。 ☆小屋の中  小屋の中に入った瞬間、全員聞き耳をお願いします。 →聞き耳  パクリ。という何かを飲み込んだような音がしました。 KP向け情報  ここから小屋に閉じ込められることとなります。  時間制限はありませんが、PL達が焦りを感じることや、一つの部屋にグダグダずっといることを防ぐため、一定時間経った所で、  あなたたちが迷っていると、ふと後ろの壁――さきほどあなたたちが通ってきた方の壁が動いていることに気が付くでしょう。  まるで、早く先に行けと言わんばかりに、あなたたちとの距離をゆっくりと詰めています。  と、いうように時間制限があるような描写を入れると良いでしょう。  実際には制限時間はないので、全てを調べ尽くしてもまだ迷ってる時などに使用すると良いでしょう。 ☆小屋の中〜最初の部屋〜  正方形の質素な部屋です。天井では裸電球が鈍い光を発しています。  壁には棚が一つ置いてあり、中央には木で出来たお粗末な机が一つ。そして、部屋の奥にはもう一つ扉がありました。  部屋の中は生暖かいのですが、何故か冷えた体が温まるようなものではなく、気持ちの悪くなるようなものでした。  あなたたち全員が小屋の中に入ると、バタン、という音を立てて扉が閉まります。なお、この扉はどうやっても開くことはありません。 棚  棚には、様々な調味料が置かれていることに気が付きます。  塩、砂糖、胡椒……と、料理をしたことがあるのなら誰もが使ったことのあるものばかりが、瓶や箱に詰まっています。 →目星  では、あなたは棚を上から下まで見ていると、ふと一番下の棚と床の間に気が付きます。  流石に電球の光もそこまで届かないようで、中は真っ暗です。  あなたがその隙間に気が付くと同時に、もう一つのことにも気が付くでしょう。  その隙間から、一つ、二つ……いいえ十や二十もあるほどの目が、あなたを見つめていることに。  充血した目が、じっとあなたを見つめています。  しかし、あなたが驚き瞬きをした瞬間、その目は最初からなかったように消え去っています。  SAN値チェックです。1/1D3でどうぞ。  なお、隙間をもう一度覗いても暗闇が広がるだけで、何もありません、手を突っ込んでも無意味です。 →料理  料理をたしなむあなたなら、そこに置かれている調味料の共通点に気が付きます。  ここに置かれている調味料は、お肉に合う、あるいはお肉に使う、調味料です。 KP向け情報  ツァトゥグァにとって、探索者はお肉です。 机  机の上には紙がセロハンテープで貼りつけられています。 「食事を味わうという行為にたまには興じてみる。  味わって、味わって、味わって。  飲み込む。  飲み込んだら戻れない。だから気を付けてね。ずっと同じ所にいたら、イライラして飲み込むことだってあるかもしれない。  気を付けて。何もできなくなったら、飽きて消化しちゃうかもしれない」 KP向け情報  ツァトゥグァにとって味わう=探索者の恐怖です。  飲み込んだら戻れない、は奥の部屋に進んだら元の部屋に戻ることは不可能を暗示しています。  前の部屋には戻れないは大事なので、もしもPLが元の部屋に戻る様子を見せたらアイディアを振らせこの部分を思い出させると良いでしょう。  ずっと同じ所にいたら〜の部分は、PLに時間制限があるかもしれないというトラップです。実際は時間制限はありません。  何もできなくなったら=死or廃人状態なので、ロストしたら探索者はその場で八番目の消化の部屋にいくことを教えています。  途中でロストした場合は、後述の「もういいやごっくん」へ。 →目星  よくよく見ると、セロハンテープにはたくさんの指紋がついていることに気が付きます。 扉  至って普通の扉です。  入りますか?  ……本当によろしいのですか? ☆二番目の部屋  最初の部屋と同様正方形の部屋です。奥の扉、置かれている家具は机と棚と変わりはありません。  ただ、その壁は真っ赤です。  この部屋に入った時、探索者は全員アイディアを振ってください。 →アイディア成功  この正方形の部屋を見て、あなたたちは違和感を感じます。  外から見た小屋の姿からして、奥にこのスペースがあるのはおかしい。と。  外から見た小屋と、この小屋の中の広さは明らかに釣り合っていないのです。  そんなおかしな現象に気付いた時、あなたたちの背筋は凍ることでしょう。  SAN値チェックです。0/1D3でどうぞ。 壁  壁は真っ赤です。その赤は、まるで、内臓のようなピンクに近い赤なことが分かります。 →目星  よくよく見れば、その赤は小さく脈動していることに気が付きます。まるで、生きているかのようです。  SAN値チェックです。0/1D3 机  机の上を見れば、そこには真っ赤な液体がぶちまけられています。その赤い液体は、机の上から零れ床に赤い水たまりを作っています。  あなたがそれを見た瞬間に、鉄の臭いが漂ってきます。本能的にそれが血であることを理解するでしょう。  SAN値チェックです。1/1D4 棚  最初の部屋と違い、棚の戸は閉まっており、ガラス戸であるため中に何が入っているかはわかりません。  戸を開けると、白いなにかが目に入ってきました。  白く、ゴツゴツとしたそれは、まるで人の顔のような――そこであなたは、棚の中に白骨化した死体があったことに気が付きます。  SAN値チェックです。1/1D4でどうぞ。 →医学  この白骨化した死体は、どうやら死んでからかなりの時が経っていることが分かります。  また、この白骨化したものがやけに綺麗なことにも気が付きます。 ☆三番目の部屋  最初に三番目の部屋に入った方は、DEX×5か回避をどうぞ。 →DEX×5or回避失敗  べしゃり、という音を立てて、あなたの頭上に何かが落ちます。  それはドロドロとしていて、べちゃべちゃとしていて。あなたがそれがなんなのかを確認する間もなく、眼前に赤い血が垂れてきます。  それは、人の顔でした。  絶望の表情を浮かべたその顔の断面からは血が絶えません。  異常な出来事にSAN値チェックです。1/1D6でどうぞ。  また、その光景を見てしまった方々も0/1D3でどうぞ。 →DEX×5or回避成功  ふと、あなたは頭上から気配を感じました。咄嗟に体をひねると、さきほどまで自分がいた場所になにか赤いものが落ちてきました。  三番目の部屋も正方形です。奥に扉があることや壁が赤いことに変わりはありませんが、部屋の脇にベッドが、その反対側には机が、置かれていました。  ベッドの足元には靴が置かれており、シンプルなデザインの布団はまるで人が横たわっているような膨らみがありました。 靴  男性サイズです。見るからに高級そうな靴です。 ベッド  薄汚れたベッドです。布団には、所々に赤い染みがついています。  あなたがベッドに目をやった瞬間です。  突如、勢いよく布団がめくれ、首から上のない血みどろの死体があなたへ襲い掛かってきます!  と思った瞬間です。 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」  苦しむような声がどこからともなく聞こえ、それは助けを求めるように腕を動かし。  やがて、どろりと溶け消えていきます。溶けたそれは、床に染み込んでいき、まるで最初からそんなものはなかったかのような元の床となります。  後に残ったのは、めくられた布団くらいです。  顔のない死体が突然襲い掛かってきたことに対してSAN値チェックです。1/1D4でどうぞ。 →目星  布団をよく観察すれば、一枚のメモを発見します。 「一体この小屋はどうなっているんだ。突然雨が降ってきたから雨宿りに丁度良いと思ったというのに!!  全く、しかも途中で拾ったメモを見たが信じられん。悪戯にしても性質が悪い!  友人たちとの間もギスギスとしてきた……くそ、胸糞が悪い。まさか、誰かを殺して差し出せばいいとでも思ってるんじゃないんだろうな!」 KP向け情報  ここで襲い掛かってきたのは、探索者達よりも先にこの小屋に入った男です。三番目の部屋に入った時に落ちてきた顔は、この顔なし死体の顔です。  彼は、共に入ってきた仲間の「誰か一人殺して差し出して満腹にさせれば帰れるかもしれない」という考えにより、机の引き出しにあるナイフで殺されました。  本来ならすぐに食べられるはずでしたが、ツァトゥグァが次に来た人間をさらに美味しく味わえるように、と取っておいたのです。  なお、ここに書かれている途中で拾ったメモは四番目の部屋で見つけるメモのことです。 机  勉強机です。机の上には赤いなにかがこびりついているくらいです。 →目星  机の引き出しは空っぽです。と思いきや、引き出しを取ってみると奥にナイフが二つあるのを発見しました。  一つのナイフの刃は赤黒く固まったものがこびりついています。もう一つのナイフは新品同様です。とても切れ味が良いように見えます。 KP向け情報  この赤黒いナイフは、布団の中の男を殺害した時に使用したものです。 ☆四番目の部屋  奥の扉を開けると、次の部屋には壁一面に本棚が窮屈そうに並んでいました。  それ以外には特に変わりはありません。相も変わらず、奥に扉があるのが見えます。 本棚  たくさんの書物が並んでいます。  その背表紙にはタイトルが書いていなかったり書いてあったり、英語だったりラテン語だったりギリシャ語だったり日本語だったりと、様々です。 →図書館  あなたは一冊の本を見つけます。  タイトルは日本語で「エイボンの書〜日本語訳版〜」と書かれています。それほどの厚さはない本です。  大体一時間くらいの時間をかけてこの本を読むことが出来ます。  母国語ロールに成功すれば三十分で読むことが出来ます。  その内容は、あまりにも常識外でした。  誰かの妄想話なのではないかとも思えるものですが、妙な現実味を帯びているそれを笑い飛ばすことは出来ず、途方もない未知への恐怖が募っていきます。  現実にそんな物が存在する訳が、と思おうとしても、この奇妙な小屋のせいで事実なのではないかという恐怖が歩み寄ります。  SAN値チェックです。1D2/1D6でどうぞ。また、クトゥルフ神話技能を3差し上げます。  なお、長い文章を読んでいく内に、あなたは気になる文章を見つけるでしょう。 「それはンカイ黒江に棲んでいる。  彼はその他に比べれば悪意のない方であるが、それでも時折牙を向ける時がある。  それは、彼が空腹の時である。  空腹の時、彼はつかんで自分の方へ引き寄せる。  逃げ延びたとしても、酸火傷を負い、血管に硫酸が流れ体中に穴があく耐え難い苦痛を味わうであろう。  その名は、ツァトゥグァ。  ヒキガエル神であるツァトゥグァのおかげで、エイボンは魔力を持つことが出来ている。  ウガア・クトゥン・ユフ!」 →目星  あなたはふと本と本の間に挟まっていたメモを発見します。 「満腹になれば、全ては終わる。  満腹になるにはどうしたらいいか。  そんなの、たくさん食べることに決まっている。  食材がなんなのか? そんなの、考えてみればすぐに分かるでしょう。  そういえば、灯台下暗しって言葉がこの国にはあるよね」 KP向け情報  探索者の恐怖を煽るためのメモです。ここで食材が探索者であることをヒントで残しています。  もしもPLが食材について分からない様子でしたら、アイディアを振らせてさらにヒントを与えてもいいかもしれません。  なお、三番目の部屋のベッドに目星したことで出てきたメモに書かれていた「途中で拾った〜」のメモです。 ☆五番目の部屋  さらに奥の扉を開けた瞬間です。  あなたたちは、五番目の部屋を見た瞬間息を呑むでしょう。  その部屋は、赤でした。壁も、床も赤色でした。その赤が、小さく振動しているのです。まるで、生きているかのように!  部屋が脈動しているという現実ではありえない光景に、SAN値チェックです。1/1D6でどうぞ。  部屋が脈動していますが、部屋はふかふかのソファアがいくつか置かれているだけで他に何もありません。  当然のように、そのさらに奥に扉がありますが。 ソファー  ふかふかのソファーです。座り心地はとても良く、もしもこの部屋ではなかったらくつろげたことでしょう。  一部のソファーには大量の赤が飛び散っていましたが。 →目星  ふと、ソファーの間に紙が落ちていることに気が付きます。 「この小屋の正体が分かった。俺が仲間に殺されない内に、せめてこれが後に来た人の為になることを祈り書き残していく。  ここは、化け物の体内だ。どういう仕組みかは分からないが、きっと化け物の体内なんだ。  ここから脱出するためには、四番目の部屋に置いてきたメモに書かれた通り満腹にするか、この空間自体を消さなきゃならないのは確かだ。  その消し方だが――」  最後の方は、紙が引きちぎられているため読めません。  紙を観察しても、点々とした赤がついているくらいしか分からないでしょう。  読み終わったあなたたちは、化け物の体内というワードに嫌悪と恐怖を抱くでしょう。  しかし否定しようにも、この部屋を見て何も言えなくなることでしょう。SAN値チェックです。1/1D3でどうぞ。 KP向け情報  ここで探索者達が体内という事実に辿り着いていたら1減少させるくらいで良いでしょう。  なお、このメモの主は正気を失った仲間に既に殺されています。  その遺体はもう吸収されているため発見することはできませんが、ソファアの赤から、彼が死んだことは分かるでしょう。 ☆六番目の部屋  部屋の中は、脈打っています。壁が、ドクンドクンという音が、意識しなくても聞こえるでしょう。  その中に混じって、他の音も聞こえる気がしますがよく聞こえません。  奥には扉が佇んでいます。 →聞き耳  耳をすませれば「助けて」という声が聞こえてきます。  その声は一つだけではありません。意識した途端に、幾百、幾千幾億もの声があなたの脳に入り込み、悲痛な助けを求めてきます。  悲痛な叫びが脳を犯す感覚と、何より壁から声が聞こえるという事に、SAN値チェックです。1/1D4でどうぞ。  またあなたは、その聞こえる中から「像を、像を」という声が混ざっていることに気が付きます。 扉  奥の扉を開けようとすると、扉に張り紙がしていることに気が付くでしょう。 「そろそろお腹いっぱいになってきちゃった。あと一口でお終いにしようかな。  最後に食べるやつも美味しいといいなあ」 KP向け情報  これは、あと一口=あと一人食べたら満足することを伝えてきています。 ☆七番目の部屋  部屋に入った瞬間、真っ先に見える光景がありました。  七番目の部屋の奥にあるのは、ガラスでした。そしてあなたたちは、ガラスの向こうの光景を見て言葉を失うことでしょう。  ガラスの向こうでは、たくさんの人が転がっていました。  誰かは震える手を伸ばしています。誰かは微動だにしません。  誰かは苦悶の色を浮かべています。誰かは呆然とした色を浮かべています。  誰が生きているのか。誰が死んでいるのか。  誰が助けを求めているのか誰が諦めているのか誰が恐怖しているのか誰が。  唯一共通していることといえば、その体は赤い床に溶け込んでおり、煙のようなものをあげて溶けていっていることです。  地獄絵図。  まさにその光景が、ガラスの向こうで広がっていました。  そのガラス向こう側の入り口である扉には、一枚の紙が貼ってありました。 「消化する部屋」  SAN値チェック。1/1D6+1。  ガラスの向こうに気を取られるあなたたちですが、ふとガラスの手前に人が倒れていること、その人の前に像があることに気が付くでしょう。  大柄の男性です。近づけば、意識はないものの微かに上下する胸から彼が生きていることが分かるでしょう。 大柄の男性  呼びかけてみても意識はありません。ただ、わずかに上下する胸から彼が生きていることに気が付くでしょう。  その服には大量の血液が付着しています。彼のものなのか他の人のものなのか、その判断をするのは難しいでしょう。  あなたが彼をよく観察するのならば、彼の手に紙が握られていることに気が付くでしょう。 「もう駄目だ。意地でも生き残ってやろうとしたが、この部屋にいるだけで息苦しくなってくる。足が、自然とガラスの向こうに行こうとする。  くそう、なんだよ仲間は全部やるから俺だけ生き残らせろよ。満腹になればいいんだろ!? 満腹になればここから出してもらえるんだろう!?」  ぐしゃぐしゃの紙には、弱々しい文字で切実な思いが書かれていました。 →医学  どうやっても彼の意識を回復させるのは無理なことが分かります。  どうやら彼はかなり衰弱しているようで、もう死の間際な事が、医学の知識があるあなたには分かることでしょう。 KP向け情報  彼が、今までのメモに登場した正気を失った仲間です。つまりこの男は、仲間を全員殺したのです。  しかし、殺しただけではまだ満腹にならなかったため逃げることは叶わず、そのまま最後の部屋にいました。  この最後の部屋は、いるだけで衰弱し、衰弱した所で足がガラスの向こうに勝手に向かうように設定しているため、  探索者がもたもたしていると彼は突然立ち上がり、意識のないままガラスの向こうに飛び込むことでしょう。  なお彼は、トゥルーに行こうが消化されかかっているので助かりません。 像  不気味な像です。  ヒキガエルのような頭と蝙蝠のような耳を持っており、口は幅が広く目は眠そうに半分閉じています。  何故か見ているだけで気持ちが悪くなってきます。  生理的な嫌悪が湧いてきて、心臓が凍えた手で撫でられたようにヒヤリとします。頭の中がぐるぐるとして、足元がおぼつかなくなります。  SAN値チェックです。1/1D6でどうぞ。 →目星  これは非常に軽いことに気が付きます。落としたら壊れてしまうのではないか、というほど脆いです。 KP向け情報  この像は、ツァトゥグァの姿を模したものです。この像こそが、この小屋――ツァトゥグァの体内――を形成している元となります。  これを壊すか壊さないかがノーマル、トゥルーの分かれ道となります。  勿論、壊したらトゥルーです。  なお、この像ですがクトゥルフ神話2010付属シナリオ「もっと食べたい」に出てくる像と非常によく似ているため  「もっと食べたい」を経験している探索者がいるのでしたら、同じなことに気が付いても良いでしょう。 ☆像を壊す(トゥルー)  あなたたちが像を壊した瞬間です。  悲鳴が聞こえました。  耳をつんざくようなそれに、あなたたちは鳥肌が立つことでしょう。  周囲がドロリと溶け出し、歪みます。歪んだのは、大柄の男もでした。  ここで全員、幸運をどうぞ。 →幸運失敗  では、あなたは歪む視界の中、それを見るでしょう。  ヒキガエルのような頭と蝙蝠のような耳と毛皮。口は幅が広く目は眠そうに半分閉じています。  そう、それは像と全く同じ姿をしていて、像よりもはるかにリアルで、巨大で、冒涜的な生き物でした。  そんな生物を見てしまったあなたは、SAN値チェックです。0/1D10でどうぞ。  あなたたちが気が付くと、周りにはたくさんの木々がありました。木漏れ日が風に揺られ小さく踊っています。  通行人たちが、自然に癒されながら和やかに談笑しつつ歩いては通り過ぎていきます。  雨なんか降っていません。  小屋なんて――ありません。  そこはあなたたちが先ほど通ったばかりの見慣れた道でした。 シナリオクリア報酬 シナリオ生還1D6 像を破壊した1D6 ☆大柄な男あるいは仲間誰かがガラスの向こうへ行った  ガラスの扉が静かに閉まります。  瞬間、たった今ガラスの向こうへ足を踏み入れた人間は崩れ落ちます。  痛みなのか恐怖なのか分からない絶叫が辺りに轟いた。と思った瞬間です。  ぐにゃりと周囲の風景が歪むでしょう。  その歪む風景の中、あなたたちは見てしまいます。  ヒキガエルのような頭と蝙蝠のような耳と毛皮。口は幅が広く目は眠そうに半分閉じています。  そう、それは像と全く同じ姿をしていて、像よりもはるかにリアルで、巨大で、冒涜的な生き物でした。  それは、あなたたちを見て口の端を釣り上げ、笑います。  そんな生物を見てしまったあなたは、SAN値チェックです。0/1D10でどうぞ。  あなたたちが気が付くと、周りは見慣れた道でした。  小屋はありません。まるで最初からそこに存在しなかったように消え失せています。  しかし、あなたは安堵することは出来ないでしょう。  だって、あの怪物の笑みが今でも脳にこびりついてはがれないのですから。 シナリオクリア報酬 シナリオ生還1D6 ☆「もういいやごっくん」(途中でPCがロストした場合)  動かなくなった体は、ゆっくりと床に吸い込まれていきます。  その身体をいくら引っ張ろうが、床に吸い込まれていく力の方が圧倒的で、歯が立ちません。  あなたたちが呆然と、あるいは慌てている数秒の内に、その体は床に溶けて吸い込まれて消え失せていました。  仲間が床に吸い込まれていくという異常な光景に、SAN値チェックです。1/1D6でどうぞ。 制作者:雪空鈴音